2023-11-08

あなたは美しいものを見たとき誰を思うの?コンクリートの隙間で咲く花、バイクで走りながら見た手を繋ぐカップル、ちらちら輝いてる星、たまらなく美味しくてあたたかいごはん、好きな時間、好きなひと、好きな場所、それらを見たとき誰に共有したいって思うの?私のそのすべてはあなただよ。私の好きなもの、ぜんぶあなたに渡したい、あなたに知ってほしい。いつかふたりで電車に乗って宛先のない旅に出ませんか。見たことのない景色も、飽きるくらい見た景色も、分かちあって、切なくてロマンがあっていいねと話しませんか。あなたにとってはその場限り、明日には忘れる約束でも、私にとっては今後一切忘れることのできない、みっともなく光る唯一の約束です。なまぬるくてくだらない時間を過ごしてよ、私とだけ。私の世界でもっともしょーもなくてまっすぐに、複雑に、昏く瞬くのはいつもあなただけだよ。これはあなたへだけのラブレター、あなたへだけ向けた汚くてかわいくて惨めな恋。

どうか信じて。大人への憧憬なんかじゃない。推しだとか簡単で便利なことばで片付けられない。ただ私はあなたがいる人生を前提に生きている。あなたの子どもみたいな無邪気さも、それと相反する不可思議なくらいの大人らしさも、私は愛せるよ。愛したいんだよ。愛させてよ。いつかあなたが私のオムライスをあたたかいって可愛い笑顔で言ってくれる日が来たらいいのに。重たいよね。ごめんね。でも、自分じゃどうしようもできないくらいもうあなたのこと好きになってしまって、こんなに我儘で身勝手な人間じゃなかったのに。

私はいつも私を好きなひとが好きで、私のこと好きなんでしょう?このさみしさを埋めてくれるんでしょう?って、ただただ押し付けるだけだった。このひと私のこと好きなんだろうなあって分かったら好きになった。だから、いま、あなたがひとつも私を好きじゃないのに、私はあなたのことがわけわかんないくらい好きで、理屈とか倫理とかもう全部飛び越えてあなたのものになりたい。いやもうとっくのあなたのものか。あなたに会えるかもしれないとき、20分前からそわそわして、何度も鏡を見て、前髪変じゃないかな?かわいいかな?って不安になって、なに話せばいいだろうってたくさんたくさん考えて、緊張で気持ち悪くなって。実際顔を見たらなんにも面白いこと言えなくて、ただ好きだなあって甘い痛みが心臓に走る。別れてから、ああ言えば会話続いたかなとか、あの発言はだめだったよなあとか、意味も価値もなんにもないことをずっと考える。それに浸って横になって眠る。夢にあなたが出てきて、夢の中でさえあなたはたまらなく美しくて、どうかあなたのその魂のバカらしいほどのきれいさ、かわいさが、これ以上私以外に愛されないようにって祈りながら起きる。朝のひかりの眩しさに瞼がぎゅっとなる。クソみたいにチープでつまんないラブソングを聞きながらあなたのことを考える。今日もやりたくもないメイクをしてあなたの前に立つ。

 

あなたに会いたい。なんにもなんないような意味のない話しでいいからあなたの声が聞きたい。私の夜はあなたが笑いかけてくれる夢とイコールなのに、あなたの夜にはきっと私は存在していなくて、それがほんとうに虚しく愛おしい。酔って視界がくるくるするとき思い出すのはいつもあなたです。そのにぱって笑う顔とか、真剣にディスプレイと睨み合ってる目とか、思い出しては抱き締めたくてたまんなくなるよ。顔を見たらじょうずにお喋りできないくせにね。ね、この関係性終わらせたいけど終わらせたくないよ。一年半後、私たちはきっと他人になるんだよね。卒業したら連れて行ってねって話したことも、お互いにきれいさっぱり忘れちゃって、昔の知り合いに成り下がるんだよね?そんなの嫌だよ。そうなるくらいならこのまま、ただ惨めにあなたに恋をするひとりのバカな女でいたい。付き合ってなんて言わないから、私があなたを好きだってきもちだけ信じて。頭を撫でて。私のこの恋心を哀れんで利用して。どんな形だっていいから、嘘だっていいから、好きだよって言ってよ。おねがい。どうしたらいいのか教えてよ。牽制が分かるほど大人じゃないんだよ。

 

好きだって伝えたら他人よりとおくなっちゃうのかなあ。

 

夢を見た。夢の中で私はありえないくらい浮気を繰り返していて、そのひとびとからも友人たちからもひどく嫌われていた。ふたりの男から、それで、本当にお前が好きなのは誰なの?と聞かれて、そのときはじめて好きな男が居ることに気づいた。あなたが好きです、あなただけが、と伸ばした手は振り払われて、つめたい、呪いが燃えているみたいな瞳だけが私を見つめていた。心臓が凍りそうで重たくて苦しくて、でも縋りつけるほど私は私に愚直になれなくて、ごめんねと謝って夜空を見た。人間の恋心なんてものとはとおく離れた顔をする、超次元的にぎらぎら輝く星の青白さをずっと見ていた。あのひとが私を見る瞳みたいだと思った。