2023-12-04

好きだなとおもうひとたちに望んでいるのは、まいにちとくに理由もなくご機嫌でいてほしいということだけ。そこに自分がいなくてもいい。

ずっとひとが大きらいだった。私がつくるものはくだらなくてもキモくて恥ずかしい、片親だから教育がなっていない、頭がわるくてうまく話せないうつ病の子、そういう目で見られてきて、望まれるのは子を産むこととマトモでいること。自分の思想を踏み躙られて、ちいさな好きをひとつひとつ諦めてきた。なにもかもうっとうしくて、直視したら死ぬしか解決策がないようなことばかりで、故意に考えることをやめた。楽だった。ひとがきらい、大きらい、みんな死んでしまえ、自分も、とそれだけを思っていれば、なにも見ずに済んだ。母が私の瞳を見てうつろに笑うことも、教師に告げられた死んだ方がいいという言葉も、義父と義兄の汚さも、まともに向き合っていたらキリがなかったし。

毎日1時間髪を伸ばして、泣きながらコンタクトを入れて、ワンピースを着て、そういう努力をしただけでなにもかもが変わった。ブスだと陰で話していたクラスメイトたちは別人みたいに、かわいいね美人だねモデルだなんてすごいね仲良くしよう、と笑った。学校に行けばモーゼみたいに人の波がひらいた。頭がおかしいんだと思った。世界は私のことをひとつも受け入れてはくれなかったのに、私のこの骨も肉も皮膚もなんにも変わっちゃいないのに、突然あなたは優れていますねと言われたって気持ちが悪いだけ。どうしたらいいのかわからなくて、登校するたび唯一ずっとそばにいてくれた友人に縋り付いていた。わからない、なにもできない、どうしたらいい、死にたいと泣いていた。ひとの醜さばかり見てきた私の目は、容易にひとを信じることを許してくれなかった。