2023-01-13

私はまったく占いを信じていない。捻くれているだけかもしれないが、ただのバーナム効果だろ、と思ってしまう。だがそれはそれとして占い師のコミュニケーション能力は凄いなあと単純に尊敬している。

と言いつつ占いに行ったことはないので、試しに行ってみることにした。何事も体験せずに批判するのは良くない。ただそこまで大金を費やしたくはないので、駅近くの安い占いに行った。

特に占ってほしいことはないんですけど、と占い師に言うと、じゃあ姓名診断と手相でも見ましょうかと言われたのでお願いした。

よく分からない単語が並んだ紙にフルネームを書くと、占い師が怪訝な顔をし始めた。あ、多分これ良くないんだろうな、と思ったが、黙っておいた。占い師に紙を渡すと、字数なのかなんなのか、私の名前の横に数字を書き出していた。

どうですか?と聞くと、「あのね、非常に言いにくいしこんなの初めて見たんだけど、ぜんぶ凶です。どこにも良いところがない」と言われた。笑ってしまった。ひとに、どこにも良いところがない、と言われるのがこんなにも面白いとは。占い師が愕然としながら、でも手相なら良いかも、と必死にフォローしてくるのさえ面白くて、10分間ずっと笑っていた。

そのあと手相やら星やらを見てもらったが、べつにたいして当たってなかったし、正直あまり覚えていない。恋しているなら相性を占いますよと言われたが、他人の個人情報を漏洩させるのは流石にダメだろうと思い、「あ、彼は前科者なので、名前はちょっと」とわけがわからないしょうもない嘘をついてしまった。すぐ、嘘です嘘です!と笑って有耶無耶に終わらせるつもりだったが、アラ……と真剣な顔で心配されてしまい、嘘だと言い出せずに終わった。

あの占い師の中で、私という客は、名前に凶しかない、前科者と付き合っている人間なんだろうか。だとしたらかなり面白いのでそうであってほしい。

占いを信じていないことは変わらなかったが、なかなかないくらい笑えたので良しとする。いい休日だった。

2023-12-04

好きだなとおもうひとたちに望んでいるのは、まいにちとくに理由もなくご機嫌でいてほしいということだけ。そこに自分がいなくてもいい。

ずっとひとが大きらいだった。私がつくるものはくだらなくてもキモくて恥ずかしい、片親だから教育がなっていない、頭がわるくてうまく話せないうつ病の子、そういう目で見られてきて、望まれるのは子を産むこととマトモでいること。自分の思想を踏み躙られて、ちいさな好きをひとつひとつ諦めてきた。なにもかもうっとうしくて、直視したら死ぬしか解決策がないようなことばかりで、故意に考えることをやめた。楽だった。ひとがきらい、大きらい、みんな死んでしまえ、自分も、とそれだけを思っていれば、なにも見ずに済んだ。母が私の瞳を見てうつろに笑うことも、教師に告げられた死んだ方がいいという言葉も、義父と義兄の汚さも、まともに向き合っていたらキリがなかったし。

毎日1時間髪を伸ばして、泣きながらコンタクトを入れて、ワンピースを着て、そういう努力をしただけでなにもかもが変わった。ブスだと陰で話していたクラスメイトたちは別人みたいに、かわいいね美人だねモデルだなんてすごいね仲良くしよう、と笑った。学校に行けばモーゼみたいに人の波がひらいた。頭がおかしいんだと思った。世界は私のことをひとつも受け入れてはくれなかったのに、私のこの骨も肉も皮膚もなんにも変わっちゃいないのに、突然あなたは優れていますねと言われたって気持ちが悪いだけ。どうしたらいいのかわからなくて、登校するたび唯一ずっとそばにいてくれた友人に縋り付いていた。わからない、なにもできない、どうしたらいい、死にたいと泣いていた。ひとの醜さばかり見てきた私の目は、容易にひとを信じることを許してくれなかった。

2023-11-29

みんながわかることがどうしてわからないのがわからない。感情の起伏が下の方にきたとき、普段のじぶんが嘘と見栄で塗り固められていることを痛いくらい感じて苦しくなる。部屋から一歩も出られなくて、服も着替えられなくて、お風呂にも入れなくて、まいにちベッドに横たわっていたあのころから本質はなにも変化していないんだと思う。

2023-11-22

結局恋をしていたいだけなのかもしれない。自分ひとりじゃ生きていく理由がなくて、なにもできなくて、でも誰かを好きでいたら生きられるし何者かになれる気がしている。自分のいやな部分に目を瞑っていられる。愛のことばかり考えているきもちわるい私を正当化できる。身勝手で傲慢な思考だ。ひとりがこわいだけ。

じょうずにひとを愛せないくせに、いつもひとを愛したがっている。傷つけるだけだと分かっているのに。なにも知らないから、なにもできないから、愛とやさしさでごまかそうとしている。救われたいから救っている、愛されたいから愛している、そんなものきれいな感情でもなんでもないのにな。どうやったらあなたたちみたいに生きられるのかなあ。学校に行けなくて、家がこわくて、ひとがきらいで、なによりも自分がきらいだったあの頃から、もう私の人生はエンドロールに入っていたのかもしれない。あのとき死んでいられたらと何度も考える。バカなやつだと呆れられて忘れ去ってもらえたならどんなにいいだろう。あなたたちのこと大すきだから私をすきにならないでほしい。

こんなに惨めではずかしい人生なのにどうして今この瞬間息をしているのかまったくわからない

いつもいつもいつもいつもひとを傷つけて問題が起きて、だから巻き込まれたくないって顔でひとと距離を取っているつもり、でもそれもきっとまちがえている。だれのことも好きになりたくない。ぜんぶやめたい。終わりにしたい

ずっと被害者ヅラだと母に言われたことが頭から消えない。部屋の隅で殴られたこともカーネーションをいらないと吐き捨てられたことも、当時から今までたいして気にしていなくて、笑い話のようなものなのに。あの言葉だけがからっぽの頭を埋め尽くしてぐるぐると巡っている。義兄のこと、アルバイト先のこと、学校のこと、ぜんぶ私が被害者ヅラしていただけなんだろうか。どうにか耐えて生き延びようとしてきたことは無駄だったのかな、はじめから私の認知が歪んでいたのかなあ。だとしたら私は私をいちど殺さないといけない。焼き殺して最初から始めなくちゃいけない。来世に乞うご期待!

気付いたら1時間経っていて笑ってしまった。自分がきらいできらいできらいでしかたない時間はいつも急速に走る。ああ、自分がきらいです、だれかにひどく嫌われたい。地獄のほうが安心する。落ちるところまで落ちて腐って死にたいな。歪んでいる。すべて。

いまあのひとに会うのは自傷に近い、判っているけど

 

文字を読んでいるとおちつく。いまここにいない誰かが懸命に生きていると思える。作者が隣でパソコンのキーボードを叩く、珈琲の匂いがする部屋を想像する。生きていこう、と思う。

2023-11-17

あなたが私をひとつも見てくれないとしても、この哀れな恋のかがやきがいつもここにあることがうれしい。あなたの横顔を見ると胸がきゅっとなること、2本目の煙草に火をつける瞬間、私はいつも苦しいほどの恋の光を感じる。どれだけ年老いてもきっと忘れることのない一瞬。どこにでもあるような川の水面がいちいち煌めいて、どこにでもいるような鳩が木の実を啄むようすにすら生命の神秘と奇跡さを感じて、曇った空の惨めな顔だって瞼に焼きつく。そんな景色のなかであなたの白い肌だけが変に浮ついていて、おかしいなあって思いながら、あなたは綺麗なひとだって単純な言葉も言えず俯いたまま。あなたを好きだというそれだけで嬉しいはずなのに、私はいつもそれ以上を望んでいて、どうにかあなたの人生に存在したいと思ってしまう。スーパーで歯磨き粉やティッシュを買うあなたの姿を見てみたい。あなたがこの世界に愚直に息をしていて、私はそういうあなたが好きで、そういうことばかりに囚われて生きていたいと思う。あなたはこんな私のことを子どもだって笑うんだろうけれど。あなたががんばらないようにすること、私にも手伝わせてくれないかなあ。

そうやって車道側を歩こうとしてくれるとき、異性として見てくれてるのかなって単純によろこんでいること、気付いてるの?気付いていないだろうなあ、私はいつも天邪鬼だし。きみじゃないひとには、大好きだよ!ってへいきで言えるくせして、きみにだけは言えない。いつもきみとだけうまく話せない。声を出したって、あ、いまのおかしかったかなあって瞬間的に後悔したりしている。きみを好きになってだめになっちゃったところも、ちゃんとし始めた部分も同時に存在していて、でもそれって根源を考えたらきみに好かれたいなあってそれだけなんだと思う。だからいま、生徒として好きでいてくれているかもしれないのに、それを私の好意でこわしちゃっていいの?ってたくさん考えているよ。ぜんぶきっと自分本位で、恋ってキモくってかわいいね。キモいなって笑っていいから、好きでいることだけは許してくれる?きみのこと書こうって思うといつもオチがだいすきになっちゃって、それしか言えない自分が大嫌いで最悪で大好き。

2023-11-13

私はあまり、匂いでひとを思い出すことがない。昔の恋人たちが香水をつけるタイプではなかったのもあるし、私はただでさえよく彼らのことを思い出すから、いちいちトリガーを引かれることがない。けれどひまわりのシャンプーの匂いだけはいまだに嗅げない。いちど別れて、友達に戻って、あの子と私と私の母でディズニーに行ったとき。シンデレラ城が見えるホテルの一室で、母がいない一瞬のあいだ、あの子がしずかに泣いたこと。どうして泣いてるのと声をかけてもひとつも声を発さなくて、大人みたいにひっそりと泣いていた。どうしたらいいかわからなくて、子どもなりにへたくそに抱きしめたら、ひまわりのシャンプーの匂いがした。やさしくてあたたかくて、でもどこか嘘みたいな匂いだった。あの子はなにも言わなかった。それから数ヶ月後にまた付き合って、あのとき泣いたのは友達であることが苦しかったからと告げられた。あの子の涙も、1500円で買った安っぽい、天使の羽のネックレスを首にかけながら家族に隠れてキスしたことも、ぜんぶぜんぶあの匂いと同じで嘘みたいだ。もう2度と会うことはないだろうけれど、たまに私を思い出してね。あんな汚い共依存じゃなくて、健康的でたいせつな愛を抱いて幸せになって。でも私とのあのころを、ホテルから見えたシンデレラ城、天使の羽のネックレス、おそろいのキーホルダー、お互いに書いた稚拙な手紙、なくしてしまった指輪のこと、思い出す夜がありますように。

 

昔のことを後悔しないようにしている。考え出したらキリがないし、全部どうしようもないことだから。あの子の住む町、横浜からかなり外れた閑静な住宅街。べと、と体にひっつくような他人の目と暗い制服の色。ひび割れた地面。あ、書いていて思い出した、あの子私が遊びに行って充電が切れてしまったとき、凍えそうな冬なのに駅にひとり私を待っていた。あれ、確か帰るって言った時間より一時間くらい遅くて、でもずっと待ってたんだ。あー、こういうことを考えだすと、自分がした最低最悪なことの解像度がぎゅっと上がる感じがして気持ち悪い。あの子は頭がわるくて、ひとりじゃなにもできなくて、そういうところが大嫌いで大好きだった。あの子がわからない話しをするとき気持ちがよくて、私以外と話していると腹が立って、たぶん所有物みたいに思っていたんだろうな。依存ともまた違う。ひととして扱っていなかったのかもしれない。ごめんね。今だって、やってることはあのときとたいして変わんないけどさ。

2023-11-11

コンビニでカップラーメンにお湯を入れているあなたを見るだけで、心臓がぐわっとあつくなるのはなぜなのでしょうか。あなたといるとき私はいつもだいじょうぶじゃなくて、でもあなたといないとき、そのにやにやと子どもみたいに笑う顔とか目がきゅっと細くなる瞬間とか、白い肌とか、やわらかい髪とか、首元のほくろとか、そういうこと思い出すとぜんぶだいじょうぶになる。うう、あなたに触れたいです。いろんなこと聞かせて、ぜんぶ教えて。どうでもいいはなしばかりして。

あなたはあのとき、とくべつな日だって言ったけど、私にとってはあなたに会えるかもしれない日すべてがとくべつなんだよー。

私にとっての恋って、爆発的におわるようなすっごいものじゃなくて、花がゆっくり枯れていくみたいな地味なものだと思う。そして私はいつも、花が枯れたことに気付けない。あの暗い部屋で泣いていた女の子、おかしくなるくらい好きで救いだった男の子、みんなみんな愛している。

悪い夢を見て泣きながら起きる朝が一日でも少なくありますように。そういう日があったら、すぐ夢のなかに飛んでいって変なこと言って笑わせてあげる。日々はそのためのネタ集めだよ。

あなたのまなざしが好き。生きようとする人間のつよいまなざし。

私はずっと、大人になれば楽になれるのだろうと安直に曖昧に思っていた。その楽の定義は時々で違って、死であったり、自分がまともになれることだったりした。いま、20歳になって、べつにそんなことはなかったなあとすこし面白い。20歳になる前に死ぬんだと思っていたときからなにひとつ変わらない苦悩があって、どうしたらいいんだよ!って泣きながら過ごしている。けれど昔と違うのは、そうやって泣いているときに引っ張り出せる美しい思い出が増えたこと。恩師が本を貸してくれたり、友達が私のくだらない変顔で笑ってくれたり、4コマ漫画をみんなで書いたこと。気にかけてくれるひとは、私が死んだら泣くひとはたしかにいるのだと思えている。あの頃にはなかったきもち。